メルボルンは外国人にもとても馴染みやすい街で、留学生活の途中からは心地よさが当たり前になっていたが、日本に帰ってきた今思い返すと、オーストラリアでの留学生活は日本では経験できない事の連続だった。
<親日派が多いオーストラリア>
もちろん行った当初は色々と辛い事も困った事も多かった。まず困ったのはやはり言葉の問題だ。日本人留学生は基本的に読み書きは他の国に留学生と比べてできる方だと思う。だが実際の日常生活では読み書きよりも聞き取りや話す能力の方が断然必要となってくる。ある程度の英語ができないともちろんオーストラリア人の友達を作るのは難しい。
ただオーストラリアのいいところは比較的日本語を勉強している人や日本が好きだという人が多いので、そういった人達は日本人留学生に興味を持って話しかけてくる。今となってはアメリカ英語よりもオーストラリア英語の方が聞き取りやすいが、思い返すと行った当初は簡単な事を聞かれても何を言っているのかわからなかった事が多かった。
というのは、日本の学校で習う英語はアメリカ英語が主流で、テレビでたまに聞く英語もアメリカ英語が多いからだろう。「オーストラリア英語はおかしい」というような事をよく日本で耳にするが、オーストラリア英語はイギリス英語とだいぶ似ているようだ。多くのオーストアリア人やイギリス人は逆にアメリカ英語がおかしいと思っているようだ。アメリカ英語はとても舌をまくので、日本人にとってはイギリス英語やオーストラリア英語の方が合っているのではないかと思う。
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地理的な条件から、オーストラリアにはアジアから多くの留学生が来ている。そんな中で、他の国の留学生と比べて「日本人で得をした」と思う事が多くあった。というのは、他のアジアの国に比べて日本に興味を持っている人が多かったという事だ。
大学でビジネスの勉強をしていたのだが、授業でも日本の話題になる事がとても多かった。オーストラリアにとってアジアの国々は貿易の面で重要なのでアジアの勉強をする事が多かったのだが、その度に「特に日本の文化は独特だ」という事がよく教科書に出てきた。授業で日本の話題になる事が他のアジアの国に比べて多かったので、日本人として嬉しく思えたし得だと感じた。
<オーストラリアのスポーツ>
メルボルンは公園やスポーツをする環境が整っており、スポーツには言葉はそれほど関係ないので、行った当初はサッカーをしていてよかったなと思う事が多かった。オージーはとにかくアウトドアーが好きで、カフェに行くにしろ建物の中よりも外を好む人の方が多いようだ。平日の昼間でも天気のいい日ならランニングをしている人を多く見かけるし、週末は公園でスポーツしている人が多い。
サッカーの話をすると、オーストラリアでの人気のスポーツはフッティと呼ばれるオーストラリアンフットボールとクリケットで、サッカーはほとんど人気がない。だがヨーロッパ系の移民はやはりサッカー好きが多いようだ。
多くの地域にサッカークラブがあって、大体週2回平日の夜に練習があり、土日のどちらかに試合をするといった感じだ。移民の多いメルボルンにはそれぞれの国のコミュニティがあり、地域によってはギリシャ人が多い地域だったりベトナム人が多い地域だったりする。
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もちろん地元のサッカークラブに入るのにも、地域によってギリシャ系の多いチームだったりイタリア系の多いチームだったりする事がある。といってもオーストラリア生まれか育ちが多かったので、ギリシャ人の多いチームに入ってもチーム内で話される言葉は基本的に英語だった。
彼らのほとんどが主に英語を話すが、両親とは両親の出身の国の言葉で話し、学校や職場では英語を話すというような感じだった。興味深かったのが、ホストブラザーの奥さんがラオス系オーストラリア人なのだが、彼女の母親がラオス語で話しかけて、彼女は英語で返していた。その人だけに限った話しでなく、移民してきた人達の家ではこういう事が多いらしい。
多国籍都市の利点は多くの国の友達が出来るという事だが、それ以外に留学生でも比較的容易に現地に馴染めるという事があるだろう。メルボルンに住んでいて、ネガティブな面で「外国に住んでいる」という印象があまりなかった。人種差別も、あからさまなものに限って言えばない方だろう。だがそれも人によっては同じ行為をされても人種差別と受け取る人とそうでない人が居るので、他の人と意見が別れるかもしれない。
日本の場合、日本人は特に外国人に対しての警戒心のようなものが強いので、外国人にとっては多少窮屈な部分があるかもしれないが、メルボルンではそういう事がほとんどなかった。それに多民族がそれぞれの文化などを大切にしながらうまく共存しているというような感じで、オーストラリアに居ながらオーストラリアの文化だけでなく他の国の文化にも触れる事ができるのがよかった。
<異文化とふれあう>
これもメルボルンに居れば当たり前のような事だったのだが、日本ではそういった機会があまりないのが現実だ。今から思うとメルボルン生活の一番の魅力は色々な国出身の人と関わるチャンスがどこにでも転がっているというとても刺激的なところだったかもしれない。
だが色々な国の人達が居るという事はそれだけ多くの異なった文化を持った人達が居るという事で、困った事もあった。他の国の留学生と関わる機会の多い学校で多少文化の違いに戸惑いを感じる事もあったが、やはり一緒に生活をすると実際に大きな戸惑いを感じる事があった。
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香港人と数ヶ月シェア生活をしていた事があったのだが、香港では深夜になって他の人が寝ていても気にしないで物音を立てたり大きな声で話すのが当たり前のようで、深夜にうるさくされるのにはだいぶ頭を悩まされた。
だが今から思うとそれはかわいいもので、香港人の次にシェアハウスに入ってきたアフリカ人はもっと最悪だった。出かける時もドアの鍵を閉めないどころかドア自体を閉めないで出て行くのもしょっちゅうだったし、ほぼ毎日友達を呼んでお祭り騒ぎをしていたので家の中はとてもうるさかった。
シェアハウスは家賃が安くなるという利点はあるけれども、シェアメイトとの問題はどのシェアハウスにも多いようなので、できるなら、元々知っている人とシェアをするのがベストだろう。
メルボルンで困った事と言えば、オーストラリア人は日本人と比べてかなり適当な部分があるというところだ。例えば車の修理を出して、「明日修理が終わるから取りにきて」と言われて、実際行ってみるとまだ修理を始めてもいないという事があった。
車の修理に限った話しではなく、結構色々な場面でこういった日本では考えられない事があってはじめは戸惑ったが、留学生活最後のほうはそういった事に慣れてきて普通の事になっていっていた。日本に何度も行った事のあるオーストラリア人の知り合いは逆に日本では何でもしっかりし過ぎていると言っていたが、確かに日本に帰国してみるとそう思う事も少なくない。
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大変だった事と言えばやはり大学の勉強だ。授業に出席して課題もきっちり出して試験を受けるのは当然の事でそれでも落ちる事がある。課題もただその科目の教科書を参考にするだけでは駄目で、先生によっては最低でも5,6冊は別の本やビジネスジャーナルなどを読みなさいと言われた。
もちろん課題だけでなく通常の授業の勉強も別にあるし、他の科目も同じような感じなのでとても大変だった。1学期で合計8個の課題を提出し終えてもその後すぐに試験があったので、一度学期が始まると常に勉強に追われているという感じだった。それだけ大学の勉強は大変なので、いかに勉強の息抜きをできるかという事も大学を卒業する上で重要だったと思う。
特にオーストラリア人の学生は平日は勉強を頑張って週末は勉強の事は忘れて遊ぶという切り替えがうまかったと思う。金曜の夜は多くの人が飲みに出かけて、メルボルン市内は毎週人ごみでいっぱいだった。
普段すぐに閉まってしまうお店も金曜の夜は遅くまでやっていた。メルボルンの多くのデパートやお店は大抵夕方の5時になると閉まる。イースターになるとほとんどのお店が開いていない。だが中国系のお店等は別で、レストランなどは毎日深夜まで営業しているところが多くて、夜遅くにどうしても何か外で食べる必要があった時には中華レストランによく行ったものだ。
<オーストラリアの食文化>
中華レストランと言っても日本の中華と中国本場の中華はだいぶ味が違うので、はじめにメルボルンで中華を食べた時は舌に合わなかった。だがこれも慣れで、学校で中国人の友達が出来たりしたので中華レストランによく行く事になって最終的にはメルボルンにある中華レストランが好きになっていた。
メルボルンのいい所は中華料理に限った話しではなく、各国の料理が味わえるところだと言われている。それはもちろん4人に1人が外国生まれという移民の街だからだ。だが日本食に関して言えば、たくさんある割には本当に安くておいしい日本食レストランは少ないように思える。
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特にメルボルンでは巻き寿司が人気で、たくさんのファーストフードの寿司屋がある。寿司だけに限った話しではないが、メルボルンにある日本食の多くが日本人ではなく中国系で、味がだいぶ中国的な味だ。なかには明らかに中華だろうというようなものにただ日本料理の名前をつけているお店もある。
その反面、シドニーにはラーメン専門店があるほか、安くておいしい回転寿司があって日本食が恋しくなる事はほとんどないのではないかと思う。だが一般的に言われている通りシドニーの人はあまり親切ではないように思えた。それにシドニーは住むとなると家賃が高いらしいので、旅行で訪れるにはいいかもしれないが実際に住むとなるとメルボルンの方がいいのかもしれない。
<きれいな街メルボルン>
メルボルンは日本ではシドニーやゴールドコーストに比べるとあまり観光地として人気はないが、グレートオーシャンロードをはじめ見ごたえのある場所はたくさんある。メルボルン市内はビクトリア朝の建物や緑が多いのでとても綺麗な街だ。
ただメルボルンはオーストラリアで2番目に大きい都市と言ってもシドニーや東京などと比べるとかなり小さい都市なので、やる事が少ないと言えば少ないかもしれない。勉強をする事だけを考えると、とてもいい街だと思う。
ホストファミリーが色々と連れていってくれた事もあって、留学生活のうちにたくさんの場所に行く事ができた。メルボルンではたくさんのホームステイの受け入れ先があるが、そのほとんどが金銭目的で留学生を受け入れている。
日本人はどうしても1家庭1人と思うかもしれないが、実際は1家庭複数の学生がホームステイしているという事が多い。食事も3食ともパンにチーズをのっけただけのものだったりという家庭があるらしく、シェアハウスだけでなくホームステイでも問題があるという事をよく聞いた。
ホームステイの場合学校やエージェントの紹介が一般的なようで、いいホームステイ先に行けるかどうかはこればかりは運としか言いようがないと思う。そんな中ですごくいいホストファミリーにめぐり合えたのはとてもラッキーだったなと思う。
留学生活は終わったが、日本に帰ってきてからも外国人の友達が出来たり留学をしてよかったと思える事がある。もしもオーストラリアに留学していなかったなら、もちろん英語力の話しだけでなく外国人とのコミュニケーション能力もついていなかっただろう。
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別の国のいいところや悪いところを学んだだけでなく、外に出てみて逆に日本のよさや悪さが見えた気もする。いい面の例えを言えば、日ごろから普通に食べている料理もオーストラリアの料理と比べるととてもおいしいという事だ。悪い面はやはり日本人は働きすぎていて金銭的にはリッチかもしれないが、ライフスタイルは貧しいという事だろう。
最後に、いい事ばかりでなく辛い経験も味わったが、そういった経験を含めてもオーストラリアに留学して心からよかったと思う。
<おしまい> |
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